残業しないで帰りたい!
それでも扉にへばり付いて、泣きながら痺れる拳を何度も振り上げて叩き続けた。
しばらくそんなことをしていたけれど、泣き疲れて喉が痛くなって、腕も疲れて動けなくなって、諦めてフラフラと家の前に膝を抱えて小さく座り込んだ。
もうすっかり暗くなっていた。
暗闇の中、目の前の道路を車のライトが通り過ぎて行くのを見ながらすすり泣いた。
お母さん……。
なんで家に入れてくれないの?
僕はお母さんに会いたいのに、お母さんは僕に会いたくないの?
お母さんは僕のことが嫌いになっちゃったの?
別れ際、お父さんの言うことを聞いていい子にしてなさいってお母さんは言ってた。
お母さんはいつも見てるよって……。
僕はいい子にしてた。
だから会いに来たのに!
……嘘だったの?
僕のことなんか見てなかったの?
僕のことはもういらないの?
僕は、いらない子なの?
膝を抱えて通り過ぎる車をなんとなく視界に入れて眺め続けた。
どのくらい時間がたっただろうか。
気が付くと目の前に親父が立っていた。
親父はそのタイミングで一番会いたくない人物だった。
家の前から動かない俺を迎えに来るように母親が連絡したんだろう。
親父はいきなり俺の頭をベシッと叩くと、勢いよく腕を掴んで引き上げた。その力は容赦がなくて、肩が抜けそうなくらい痛かった。
「何やってんだ!手間かけさせるんじゃない!帰るぞ」
腕を掴む親父に嫌悪感を感じてジタバタ暴れて抵抗した。
「痛いっ!やめてよ!いやだっ!離せっ!お母さーん!」
「もうお母さんじゃないんだ!さっさと来いっ!」
親父は俺を引きずって車の後部座席に投げるように押し込むと、エンジンをかけてすぐに車を発進させた。