残業しないで帰りたい!

ここ数年、うちの会社は残業削減に力を入れている。

当初は人件費削減が目的だったけれど、このところ世間でブラック企業が取り沙汰されるようになったことで、社員が変に触発されて、労働基準監督署の査察が入るような事態になっては困る、という理由も最近加わったようだ。

労基署の査察は、賃金の不払いやら違法な長時間労働を労働者が相談することで入ることが多い。

最近ロゴも変えたりして、クリーンなイメージを前面に出しているわが社としては、そういうイメージダウンは避けたいんだろう。

いや。イメージダウンで済めばいいけど、労基法違反は刑事告訴にもなりうる。「労働基準法違反で書類送検」なーんて勘弁してほしい。

まあ、うちは就業規則も労務管理もきちんとしているし、大それた違反もしていないから、そんなことはあり得ないけど。

でも、俺が入社した当時は明らかに労基法違反だったと思う。今で言うブラック企業。

朝から晩まで働いても残業代が出ないなんて当たり前だったし、アルバイトは3件以上契約を取らないと、どんなに働いても無報酬だった。

俺はアルバイトの頃からずっとこの会社で働いてきたから、仕事ってそういうものなんだって思っていたけど、本当は違ったらしい。

あの頃ってなんか猛烈な時代だった。

俺たちより少し上の人たちはバブルを知っている世代で、仕事も遊びも変な勢いがあって、俺たちの世代とは明らかに感覚がズレていた。

営業ノルマは残酷なくらいシビアで、辞めていった同期は何人もいる。

早朝に出社して事務仕事をしてから外回り。そして外から帰ってきたら、また机に向かって深夜まで黙々と仕事をした。
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