残業しないで帰りたい!
先輩はブドウ糖の点滴なんか打っていたけど、あれは本当に効くらしい。
俺も薬局で売っているブドウ糖の角砂糖をよく食べていた。あれを食べると不思議と頭がスッキリする気がした。あれってきっと脳を働かせるための養分だったんだろうなあ。
でも、今は違う。
時代の変化、社会の変化に合わせてうちの会社も本当に変わったと思う。
それでもお偉いさんたちはブラック時代を知っているし、気質も若干残ってるからビビってるんだろう。
そんなわけで、ビビった本社から残業削減のために管理職は見回りをして社員に残業させないように!なんていう珍妙なお達しが来た。
残業の見回りねえ……。
本当は大塚の仕事なんだけど、俺はその残業の見回りとやらに興味を持った。
各課から書面で出される残業理由だけじゃなく、なぜ残って仕事をしているのか自分の目で見て現状を把握した上で原因を知り、対策を考えたいと思った。
それに大塚は最近、横浜スタジアムデートなんて繰り返してる思ったら「実は出来ちゃったんスよ」なんてふざけたことを嬉しそうに言っていきなり結婚した。
人が変わったように毎日速攻で帰る大塚に、この役目はちょっと可哀想だからね。
「その見回り、俺、やりますよ」と言うと、支社長はどうしたの?って驚いた顔をし、大塚はあからさまに嬉しそうな顔をした。
大塚……、俺一人でやるわけじゃないよ?たまには交代するんだよ?わかってる?
でもまあ、俺もちょっとはやる気を出してみたわけで。
しばらくは毎日見回りをしていた。
でも、だんだんコツを掴んできたし、毎日はさすがにめんどくさいから、抜き打ち検査的に見回りをすることにした。
見回りをして、やたら残業の多い課は理由を探って改善策を考えたし、意味もなく惰性で残業してるような課は管理職会で「本社に報告しときまーす」なんて俺が言うもんだから、慌てて帰るようになった。
まあまあ効果はあったんじゃない?