残業しないで帰りたい!

どうしたの?

営業課の日程表では今日は特に予定はない。変更の知らせも来ていない。
それなのに、なんで残ってるんだろう。

このまま見回りに行ったら会ってしまう……。

いやいや。
会っていいんだよ。
むしろ話しかけるチャンスだよ?

……チャンスかあ。

ドキドキしながら、とりあえず7時の見回りに出発した。

いったん倉庫に降りて、そこから階段で徐々に上に登りながら見回りをしていく。

まずは倉庫でお喋りに夢中になっていた倉庫係のオジサンたちを「お喋りは残業じゃないッスよ」と追い帰す。
それから上に登って、賑やかにミーティングをしていた販売促進課の子たちに「早く帰んなさい」と声をかけた。

総務課と経理課は見回りに行く前の段階で全員に退勤のチェックがついていたから、飛ばして上に登る。

そして営業課。営業課は残業の常習犯だ。
まあ営業は戻ってから事務仕事を片付けないといけない。自分もそうだったから、営業の残業は理解できる。

でも、今日は青山さん以外、全員退勤にチェックが付いていた。きっとみんな見本市の準備で疲れてるから、帰れる時には帰りたいんだろう。

明かりが漏れる営業課をこそっと覗き込むと、予想通り青山さんは一人でパソコンに向かって作業をしていた。

何やってるんだろう?
すごい集中してる。

そーっと足音を立てないようにかなり近くまで寄ってみた。なんかこんなの、悪いことをしている気分だ。

青山さんの後ろ姿に目を細める。
細い肩、白いうなじ。わずかに見える頬……。

あー、ヤバい!
息が乱れる。
すっごいドキドキする。

思わずゴクリと唾を飲み込みそうになって、ギリギリでこらえた。
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