残業しないで帰りたい!
息を止めても鼓動が響いて聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい心臓がバクバクしている。
でも、青山さんは全く気がつく様子はない。
こっそり画面を覗き見ると、青山さんはイベント毎のサンプル提供数とアンケートのデータを取りまとめていた。
……3ヶ月分?
さては高野のヤツ、溜めてたな!
青山さんはこの作業、初めてなんだろうか?
ずいぶん不慣れな感じ。
だけどすごい熱心に一生懸命やってる……。
一生懸命な姿も可愛いなあ。
こんな手が届く距離に青山さんがいる。
少し手を伸ばせば肩を掴める距離……。
胸がキュウッと締め付けられた。痛くてたまらない。
どうしよう。声かけてみる?
超ド緊張……。
心臓が飛び出しそう。
……。
やっぱ無理だよ……。
とてもじゃないけど、声なんてかけられない。
足音を立てないように営業課を後にした。
はあっ……。
走ってもいないのに息が切れる。
廊下の壁に力なくトサッと寄りかかった。
何やってんだよ!
せっかく声をかけるチャンスだったのに!
さすがに8時までには帰っちゃうんじゃない?
チャンスだろ?行けよ!
今すぐ行け!
……いや、ダメ。
何話していいのかわかんない。
フラフラと自分のデスクに戻って、ベタッと伏せった。俺の中で積極的な俺と臆病な俺が戦ってる。
だって、声かけるなんて無理だよ。近寄っただけでも超ドキドキだったのに。
それに怖いんだ。
拒まれることが。
でも、そんなこと言ってたら、いつまでたってもこのままだろ?
それはまあ、そうなんだけど。
それはそれで嫌なんだけど。
でも……やっぱり怖いんだ。
……はあ、救いようがないなあ、俺。