残業しないで帰りたい!

……初めて目が合った!

衝撃的。
目を見開いたまま茫然とした。

耳が詰まって、突然周りの空間が歪んで異空間に囲まれてしまったような錯覚に陥る。

一瞬一瞬がコマ送りされているかの如く、時間の進みをゆっくり感じる。

彼女から目が離せない。

聞こえてくるのは自分の鼓動だけ。

ヤバい……。

彼女の瞳が俺のことを見てる。
俺のこと、じっと見てるよ!

……でも。
初めてしっかりと見つめたその瞳に、俺は言い知れぬ不安を覚えた。

その灰みがかった茶色い瞳。

どうしてかはわからないけど、その透明な茶色い瞳から瞬間的に短命を連想した。

君は、早く死んでしまいそうな気がする。
どうしてそんな不吉なこと思うんだろう。

そんなのイヤだ……。
お願いだから、早く死なないで。

……。

俺はバカだな。
こんなの、何の根拠もないのに。

吸い込まれるように目を離せずじっと見つめる俺を彼女もじっと見ていた。

いやいや、彼女は俺の突然の出現に驚いているだけだよ。
何か話しかけなきゃ……。

「仕事、まだ終わんない?」

彼女は帰り支度をしてかばんを手に持ってるんだから、そんなわけがない。なにこの質問!

「い、いえ!もう終わって今帰るところです」

喋ったっ!
ああ、やっぱり声もいいなあ。

「あ、そーなの?なら良かった」

俺のテキトーな台詞に青山さんは首を傾げた。

せっかく青山さんと会話をしているのに、どうしてこんないい加減な言い方をしちゃうんだろう。俺、緊張しすぎじゃない?

と、とにかく!
早く帰ってもらおう。
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