残業しないで帰りたい!

「そういえばさ。今、香奈ちゃんが25で、翔太さんが36なんでしょ?だとあれだね、俊夫さんが死んだ時の私と俊夫さんの年齢と一緒だね」

「……」

それを聞いた香奈ちゃんはウルウルして、やっぱり泣き出してしまった。

あーあ、香奈ちゃんのこと泣かせちゃった。

香奈ちゃんを泣かせたいんじゃなくて、このイケメンに仕返ししたかったんだけど。

あれ?
でも……。

香奈ちゃん、今日はずいぶんよく泣くね?
いつも周りを気にしてにこにこして、悲しくても感情をひた隠しにして、泣いたりするような子じゃなかったのに。

それとも感情を表に出すようになったの?
まさかそれもこのイケメンの影響?

「俺はっ」

イケメンがいきなり大きな声を出した。

「俺は、長生きしますから」

「ふーん、せいぜいがんばってね」

このイケメンは、私の言いたいことがわかったらしい。わかったのなら、仕返し成功ってことだ。

高価な指輪といい、ズケズケした態度といい、この男はイケメンのくせに相当独占欲の強いタイプとみた。

自分が死んだ後、香奈ちゃんが私みたいに再婚して楽しく生きていくなんて考えたら、ヤキモチに焼き焦がされて、のたうち回るだろう。

ま、がんばって長生きすればいい。

愛する人をあんなに早く失うなんて、そんな悲しい思いを香奈ちゃんにはさせたくないもの。

あんな辛い思いはあの時だけでいい。
できることなら末長く幸せに過ごしてほしい。

それが私の心からの願いなんだ。

信じてもらえないかもしれないけど、本当にそう思ってるんだよ。
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