残業しないで帰りたい!
久しぶりに香奈ちゃんに会った心愛は、とてもはしゃいで「ママの絵描いたー」と走ってきたと思ったら「もっと描いた絵、見せたげるー」と香奈ちゃんを自分の部屋に連れていった。
ナイス!心愛!
香奈ちゃんがいない間に、私はイケメンに話しておきたいことがあった。
「香奈ちゃんのお母さんが亡くなった話は聞いてる?」
「はい。幼稚園の頃、病気で亡くなったとか」
「うん、そうなんだけどさ」
香奈ちゃんが大人の様子を見て相手に合わせようとするのは、お母さんの影響なんじゃないかって、私は時々思うことがあった。
体が弱かったという香奈ちゃんのお母さん。きっと、精神的にも余裕はなかっただろう。
か弱いお母さんを、幼い香奈ちゃんは一生懸命支えていたんだと思う。
子どもの頃から真面目で責任感の強い香奈ちゃん。いつも我慢をする役回りの香奈ちゃん。
香奈ちゃんは、お母さんを支える、ものわかりのいい小さな大人にならざるを得なかったのかもしれない。
誰が悪いってわけじゃなくて、香奈ちゃんの置かれた状況とはそういうものだったんだろう。香奈ちゃんにとって、それは当たり前のことだったのかもしれない。
でも、もう今は大人になったんだから、もっと自由に生きてもいいのに、香奈ちゃんはやっぱり人に合わせようとする。
私は香奈ちゃんのそういうところが、見ていられないって言うか、歯がゆくてイライラする。
このイケメンは香奈ちゃんのそういうところ、ちゃんとわかってるのかな?
私はイケメンに、香奈ちゃんのお母さんが体も心も弱かったこと。香奈ちゃんはお母さんを一生懸命支えていたであろうこと。
そして、香奈ちゃんが私に『お母さん』になると辛くて苦しそうだから、優香さんには『お母さん』にならないでほしいです、と言ったことを話してやった。