残業しないで帰りたい!
こんな取り返しのつかない気持ちになってしまったのに。
まさか、君に怖がられてしまうなんて……。
君が女の子って言われることがそんなに嫌だなんて思いもしなかった。
自信がないの?
自分のことを女の子じゃない、可愛くない、なんて。
君はすごく可愛いんだよ?
俺にとって、君は可愛い女の子なんだ。
それをわかってほしくて、ついしつこくしてしまった……。
「可愛いよ」「可愛くありません」と繰り返した結果、彼女はうつむいてかすれるような声を出した。
「……怖いから、お願いだから、もうやめてください」
震えて涙目のままうつむく彼女を見て、本当に怖がっていることがわかってハッとした。
女の子に怖がられるなんて……。
まして青山さんに怖がられるなんて、一番やっちゃいけないことなのに。
俺、何やってんだろう。
もう完全に嫌われた。
はあっ……。
俺は本当にバカだ。
不思議だけど、あの時なぜか彼女を思い通りにしたくなったんだ。
今までそんなこと、考えたこともなかった。
人を自分の思い通りにしたいなんて。
でも、彼女には俺の思い通りに、自分が可愛い女の子だってことを自覚してほしかった。
つまり、俺は彼女に干渉したくなったんだ。
今まで付き合ってた女の子たちには持たなかった感情。
干渉したいって、何だ?
思い通りにしたい?
つまり彼女を支配したいの?
……彼女のことが好きだから?
人は思い通りになんてならない。
支配なんてできない、
そんなの当たり前なのに。
そのままの彼女が好きだと思いつつ、自分の思い通りにしたいと欲する。
そんな相反する感情が自分の中で混ざり合って混乱した。