残業しないで帰りたい!

1年以上ここで煙草を吸ってるけど、青山さんがここに来たのは初めてなんじゃない?

その姿に驚いて、一瞬目を見開いて声を出しそうになって、でも次の瞬間、自分が嫌われていることを思い出して、瞬時に寝たフリをした。

なにコレ?
俺、バカなんじゃないの?

うすーく目を開けて様子をうかがう。

あっ!
青山さんが俺に気がついた。

見てる!見てるよ、どうしよう。
なんで俺、寝たフリなんかしちゃったんだろう。

でもまあ、彼女は俺のことなんかスルーして、すぐにどっか行っちゃうでしょ?

そう思ってたのに……。

なんで?

なんで近寄ってくんの?

青山さんは興味津々な子どもみたいに、大きな瞳をそらすことなく俺のそばに寄ってきて、じっと俺を見始めた。

なになに?どうしたの?
何を見てるの?俺を見てるの?
薄目だから、状況がよく掴めないよ。

それにしても、こんなに近くに寄ってくるなんて……。

ドキドキして鼓動が全身に響く。
息を静かに抑えるだけで精一杯だ。

俺のこと怖いんじゃないの?
嫌いなんじゃないの?

……そういうわけじゃないの?

こんなに近寄ってきたら……。
バカな俺は、脈ありなんじゃないか、なんて自分勝手な錯覚をしちゃうよ?

それとも、君は誰にでもこんなことをするのかな?

……話しかけたい。

あー、どうしよう……。
寝たフリをした代償は大きいな。

……でも。
もう、いいやっ!

何かを隠しても仕方がない。
かっこつけても仕方がない。

俺は俺のままで、全てを君にさらけ出そう。
俺がバカであることも全て。
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