残業しないで帰りたい!

でも、そんなことを言われたら怖いよね?
だから、言わない。
もう、やめておこう。

立ち上がって、スーツの埃をパンパンッと払った。

長居は不要だ。長くそばにいると、余計なことを喋って君を怖がらせてしまいそう。

「俺、そろそろ行くよ。そういえば、君はなんで非常階段になんて来たの?」

青山さんはハッとして急にあわあわと焦り始めた。……可愛い。

「会議の資料を高野係長に頼まれてたんです!私、急いで行かないと!」

青山さんが急いで階段を降りようとしたから、ひょいっと上から資料を奪った。

「あっ!」

驚いて見上げる彼女。
あーもう!その顔も可愛いなあ。

「その会議、これから行くから俺が持って行ってあげる。別にそんなに急ぐことないよ」

青山さん、首を傾げて呆れてる?
管理職会、サボっちゃダメ?
まあ、そうだよね?

「ここってさ、冬になるとあっちに富士山が見えるんだ。俺のお気に入りの場所なんだよ」

話を変えつつ、サラッと自分がよくここにいることを主張してみた。

もし君が俺に興味があるなら、俺はここにいるから。いつでも来て。俺、待ってる。

そんなつもりで言ったんだけど、伝わった?

さてと。

資料も預かっちゃったし、ここにいたら余計なことを言っちゃいそうだから、もう行こう。

でも、階段を降り始めたら無性に気になって耐えがたくなって立ち止まった。

どうしても聞きたい。

なんで俺のそばに寄って来たの?
なんで俺をじっと見ていたの?
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