残業しないで帰りたい!
久保田さんは時々、商談相手の気に入った女の子が社内にいると紹介する、という手を使う。
くだらない気がするけれど、いやらしいことに商談の成功率は確かに上がる。
でも、そんな成功は一時的なものだ。
先のことを考えたら、信頼関係を丁寧に築いた方が俺はいいと思うけど。
それにしても、久保田さんだって閉じ込めるなんてことはしないと思ってた。食事の場をセッティングして、後はお二人でどうぞって感じだったのに。
久保田さんが紹介するような女の子は、奢ってもらえるから、とか、お金持ちと出会いたい、なんて考えている子が多いから、久保田さんと利害が一致してうまくいく。
でも、青山さんはそういう子じゃない。
もしかして、青山さんが嫌がったから?
だから閉じ込めたのか?
部屋に男と二人きり?
そんなのって……。
青山さんは俺が可愛い女の子って言っただけでも怖がったんだ。
それなのに、男と二人きりなんて。
もしかしたら青山さん、ものすごく怖い思いをしてるんじゃ……。
助けなきゃ!
今すぐ助けに行かなきゃ!
それ以上、何も考えられなかった。
スタスタと早足で応接室に向かう俺に白石さんと沢口さんは黙ったままついてきた。
応接室の前には二人が言った通り、久保田さんが腕組みをして携帯を見ながら立っていた。
「久保田さん、何してんの?」
「……藤崎くん?何よ、何か用?」
「応接室使いたいからどいてくんない?」
「応接室は私が使用中です。ちゃんと予約して使ってるんだからいいでしょ!」
「もう商談は終わったんでしょ?」
「まだ終わってないから!邪魔しないで!」
久保田さんが見下すような強い視線を俺に向けたその時。
ガシャンッ!
「!」
突然、扉の向こうから何かが割れるような音がした。