残業しないで帰りたい!
何!?
何があった!?
青山さんっ!?
何も考えず、手加減もせずに久保田さんを押し退けて扉を開けた。
次の瞬間、視界に飛び込んできたのは青山さんに手を伸ばす男と、茫然自失で立ち尽くす青山さんだった。
目を見開いた。
彼女に触れたのか?
オマエは彼女に触れたのかっ!
その男に対する凄まじい憎悪が腹の底から震えを伴って湧き上がってきた。
次の瞬間。
ドシャッと青山さんが崩れ落ちた。
なっ!
倒れた!?
なんでっ!
その男のせいか?
青山さん?
青山さんっ!
その時、倒れた青山さんに駆け寄りたい自分と男に殴りかかりたい自分、二つの道がスポットライトに照らし出されるように現れたのを感じた。
今あの男に手を出したら、頭蓋骨を折るまで殴ってしまいそうな気がする……。
こんなに暴力的で狂気じみた衝動を感じたのは初めてだ。
ダメだよ。
殴りたいけど……。
あの男を殴ってはいけない。
一度殴ったらきっと止められない。
殺してしまうかもしれない。
目を見開いたまま男への狂気を無視したら、自分の中をのたうち暴れる怒りが行き場を失って、脳みそが沸騰しそうな気がした。
でも、優しい君は自分が原因で俺が暴力沙汰なんて起こしたら、きっと責任を感じて悲しむだろう。
だから、自分の脳が破裂しても構わないから男は無視しよう。
そう心に決め、青山さんだけをじっと見つめ、他の全てを視界から締め出して、真っ直ぐに青山さんに駆け寄って床に膝をついた。