残業しないで帰りたい!
「青山さんっ」
青山さんはぐったりと力なく床に倒れていた。
髪は乱れ、目はピタリと閉じ、頬は青白く血の気がない。本当に全く意識がなかった。
その姿を見たら悔しくて悲しくて、たまらない気持ちになった。
ああ……なんてことだ……。
俺の目の前で気を失うなんて。
何があった?
怖かった?嫌だった?
それとも触られる前にも何かされた?
俺がもっと早く来ていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
俺は彼女を守れなかった……。
悔しくて頭に血が昇ったけれど、目を閉じて、大きく深呼吸をして昂る感情を抑え込んだ。
そして目を開けると、そっと彼女の肩に手をかけて小さく揺すった。
初めて触れた彼女の肩は思いのほか細く頼りなくて、切なさに胸が痛んだ。
軽く揺すっても、青山さんの体はぐんにゃりしたまま全く反応がない。
どうして?
どうして目が覚めないの?
こんなの不安で耐えられない。胸が押し潰されそうだ。
もう一度、今度は少し強く揺すった。
「青山さんっ」
起きて!目を開けてよ!
やだよ、死んじゃった?
そんなのやだ!
いやだっ!
「青山さんっ!起きて!青山さんっ」
力なくぐんにゃりしたままの青山さんを揺すり続ける俺の横に白石さんが割り込んできた。
素早く胸に耳をあて、顔に耳をあてる。
「鼓動も落ち着いてるし息もしてるから、とりあえず大丈夫そうですよ。貧血なんじゃないんですかー?」
はっ?大丈夫?
これのどこが大丈夫?
すごいね?
君、よく落ち着いていられるね?
でも、確かに小さく息が聞こえる。
大丈夫……なんだろうか?
とにかく、床に青山さんを置いておくなんて嫌だ。ソファーに移そう。
頭上で男が何か言っているようだったけれど、その男の存在を俺の脳は完全に無視することにしたらしい。何を言っているのか、全く耳に入ってこなかった。