残業しないで帰りたい!

「白石さん、救急箱持ってきて。どこにあるかは人事課の平林さんに聞いて。それから沢口さんは絨毯を掃除して。掃除道具は給湯室にあるから」

「はーい」
「わかりました」

二人がパタパタと部屋を出て行くのを背中に感じながら、青山さんの手を握って血の気のない青白い頬を見つめた。

はあっ……。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。

どうして倒れたの?
やっぱり、あの男が原因?

何かされたの?
あの時、触られてるみたいだったけど……。

ああ、許せない!

……許せないっ、けど……今そのことはいったん隅に置いておこう。あの男への憎悪を思い出すと、狂気が暴れて止められなくなる。
それに、あの男も悪いけど久保田さんも悪い。

だから、この件は今のところ保留。

それより、君が倒れた理由だ。

貧血?
どうしてもそうは思えない。

だって、男が触っているように見えたあんなタイミングで貧血なんて。
おかしいよ。

青山さんは可愛い女の子って言われるのを怖がっていた。
それは男から女として見られたくないっていうことなんだと思う。

男と二人で食事に行ったこともなかったなんて、意図的に男を避けてきたとしか思えない。

やっぱり。
……君は男が苦手なんじゃないのかな?
それも、相当。

男は嫌い?
男は怖い?

君は男と二人きりにされて触られたから、倒れたんじゃないの?
あまりの恐怖で。

もし、そうなら……。

そんなに男を怖がるなんて、過去の君にいったい何があったんだろう。
知りたい。
君の全てを知りたい。

君の何もかも、全てを受け入れるから。
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