残業しないで帰りたい!
どうしたら新田に会わせずに済むだろうか。
香奈ちゃん、明日会社休んでくれないかなあ。
そんなことを考えていたら、さっそく新田から電話がかかって来た。
『お前、水臭せーな!なんで言わねーんだよ!噂で聞いたよ?若い子なんだって?』
「んー?噂ねえ……」
『そりゃあお前、独身王子が社内で付き合ったら噂になるでしょうよ。しかもお前、壁ドンしたらしいじゃん?笑えるー!』
電話の向こうからゲラゲラとデカい笑い声が聞こえてきた。
「いいだろ。ほっといてよ」
『えっ……、ホントにしたの?ただの噂かと思ってたのに、マジか?ギャハハハハッ!チョーウケる!』
今度は机をバンバン叩いている音が聞こえる。なんだよ、腹立つなあ。
「……」
『お前をそこまで虜にするなんてねー。地味だって聞いたけどホントか?脱いだらすごいの?やっぱり若い女の体はいいだろ?はまった?』
新田は相変わらずえげつない。
「そういうことじゃないの!」
『ねえねえ、芸能人だと誰に似てる?可愛い?髪型は?あっ、胸デカい?そうそう!お前、相手が若いからって調子に乗るなよ?自分の歳考えないと腰痛めるからな!』
「うるさいっ!君には絶対に会わせないよ!」
『バーカ!会わせてくれなくても、俺、勝手に会いに行っちゃうもーん!』
「いいから仕事しろ!」
『なに言ってんの!俺の人生仕事だけよ?もう、仕事しか頭にないんですよぉ』
ふざけたこと言って、新田のヤツ、香奈ちゃんに会ったら何を言うかわからない。
うちの営業連中は、ただのウケ狙いで平気で人の嫌がることをする。
あの軽薄なノリ、俺は苦手だ。
新田は冗談混じりの嫌がらせで、俺の昔の素行を平気で香奈ちゃんに言うだろう。
そんなの絶対にダメだ!
絶対に香奈ちゃんを新田には会わせるわけにはいかない。