残業しないで帰りたい!
仕事中だったけど、『ちょこっと来て』とラインで香奈ちゃんを非常階段に呼び出した。
しばらくすると、ガチャッと開けた扉の隙間から香奈ちゃんがそっと顔を覗かせた。ピンクの制服を着た香奈ちゃん、やっぱり可愛いなあ、なんて目を細める。
「ごめんね、急に呼び出して」
「ううん、どうしたの?」
「あのさ、香奈ちゃん。今日うちに来ない?」
「え?明日仕事だよ?いいの?」
「うん、いいの!」
いつもは週末に俺の家に誘っていたから、平日に誘ったのは初めて。そのせいか、香奈ちゃんは不思議そうに首を傾げた。急に変だった?
「たまにはいいじゃない。それともなんか用がある?」
「ううん、ないよ」
「美味しい晩ご飯、作ってほしいなあ。今日は一緒に買い物して帰ろう?」
香奈ちゃんは困ったように首を傾げていたけど、少し甘えて一緒に帰ろう?と言ったらにっこり笑ってうなずいてくれた。
香奈ちゃんは料理が上手だ。
最初に作ってくれたオムライスも美味しかったし、和食も中華も洋食も、作ってくれたものは何でも美味しい。
香奈ちゃんは子どもの頃からよく料理をしていたという。例の継母が作らせていたんだろう。
「優香さんは働いてたから、二人で役割分担をしてたんだよ?」
そんなことを言って、相変わらず君はお人好しだ。
その継母は子どもだった君に料理なんかさせて利用していたんだ!いい加減気がついてよ!
これだから心配なんだ。
会ったことはないけれど、彼女の継母からはどうも悪意を感じて好きになれない。
継母にも色々いるんだろうけど。
俺は、俺の母親を名乗った何人もの女のことを全然好きになれなかった。