残業しないで帰りたい!

会社帰り、駅で待ち合わせをして手を繋いで買い物に行った。平日の会社帰りに手を握る、いつもと違うシチュエーションには心地よい違和感がある。

スーパーで蓮根を両手に取り、真剣に見比べる彼女のまた可愛いこと。

何をしていても可愛い、愛おしい。

帰ってきてからは、エプロンをして料理をする彼女の後ろ姿を頬杖をついてじっと見つめた。
はあ……、可愛いなあ。
俺ってバカでしつこいから、この気持ちはずっと変わらないだろう。

じっと見つめる俺のことなど気にすることもなく、香奈ちゃんが俺の家の台所で手際よく作った今日の夕食は和風の煮物だった。

「和風の煮物、じゃないよ?これ、筑前煮っていうんだよ?」

「へー、そうなの?すごく美味しい」

「味、濃くない?」

「いや、ちょうどいいよ」

「ホント?よかったあ」

ふふっと笑い合う。
この瞬間が好きだ。
温かい空気に包まれるから。

ただ、香奈ちゃん……。
最近この手の和食をよく作るよね?
俺の健康を気にしてくれてるのかもしれないけど、俺、おじいちゃんじゃないんだよ?

たまにはガッツリなものも作ってほしいなあ。
今度、リクエストしてみようかな。

「明日の朝はいったん家に帰るね」

食器を洗って風呂も入って、ほかほかに温まった体をベッドに入って抱き締めると、彼女が俺を見上げてそう言ったから、俺は本題に入ることにした。

「ねえ、香奈ちゃん。明日、会社休まない?」

「えっ……?どうして?翔太くん、明日お休みなの?」

「そういうわけじゃないんだけどね」

香奈ちゃんは不思議そうに俺を見た。

そりゃ、そうだよね?
急に会社休んで?なんて言われても困るよね?
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