残業しないで帰りたい!

これからは、平日も香奈ちゃんを誘ってみようかな。
朝になってから一度帰らなくてもいいように、香奈ちゃんの家に寄ってからうちに来ればいいんだし。

俺が香奈ちゃんちに泊まってもいいんだけど、女の子の部屋ってどうにも居心地が悪い。
やっぱりうちに来てもらうのが一番落ち着くんだよな。

朝、香奈ちゃんと一緒にうちを出て、一緒に通勤電車に乗るなんて。さすがに一緒に出社したら目立つから、会社に近づいたら別れて俺はコンビニに寄って時間ずらしたりして……。
あーいいな。憧れるなあ。

今日は早く起きたおかげで、ゆっくり朝食を食べても、いつもよりずっと早い時間に家を出ることができた。いつもと違う時間の電車はなんとなく落ち着かない。

そしてかなり早く会社に着いてしまった……。

人事課はまだ誰も来ていなかった。一番に出社するのは初めてだ。朝の光が差し込む静かなフロアはいつもと違って見える。

新田のヤツ、何時にこっちに来る気だろう?
聞いてみるか。

『新田、何時頃こっちに来る?』

そうメールを送った。まあ、アイツはすぐに返事は送ってこないだろう。来るのはどうせ午後だろうし。

そう思っていたらすぐに返事が来た。

『もう来てるよ。今日の商談、朝イチだから。こんなに仕事してたら俺、もう死んじゃう』

は?
なに言ってんだ?コイツ。
どこにいる?

……まさかっ!
アイツ、まっすぐ営業課に向かったのか?

香奈ちゃん、まだ来てないよね?アイツに会っちゃダメだ!

急いで7階に向かいながら香奈ちゃんにラインでメッセージを送った。

『新田って男が来たら無視して!絶対会っちゃダメ!』

最初からそう言えば良かった。新田って悪い男がいるから会っちゃダメだって。

それなのに、……なんていうことだ。

7階でエレベーターが開いた途端、視界に飛び込んできたのは向かい合う香奈ちゃんと新田の姿だった。
< 191 / 259 >

この作品をシェア

pagetop