残業しないで帰りたい!

間に合わなかった……。
こんなに早く会社に来たのに!

己の詰めの甘さに腹が立つ。

苛立つ俺を見て、新田はニヤリと笑った。

「おおーっ、超モテ王子のご登場!」

やめてくれ!なに言ってんだよ!
新田、香奈ちゃんに何か言った?

「新田!いいからさっさと仕事に行けよ!」

「いやだなあ、まだ来たばっかよ?始業前よ?俺、もっと香奈ちゃんとお話ししたーい」

香奈ちゃん、かなり戸惑ってる。
心なしか俺を見る目にも戸惑いを感じる。

もっと香奈ちゃんと話したいなんて、新田のヤツ、もう既に何か話をしたのか?
だいたい新田のくせに「香奈ちゃん」とか言うな!そう呼んでいいのは俺だけなの!

「いいから!もう行け!」

「はあっ?何言ってんの?お前、こんな可愛い彼女を独り占めして、ただで済むと思うなよ!いやあー、それにしてもねえ、あの千人切りの藤崎がたった一人の女に夢中になるとはねえ」
 
「なっ!そんなに切ってない!」

やめてくれ!千人は言い過ぎ!
それにこの野郎、やっぱり言ってほしくないことをわざと言ったな!
朝からなんなんだ、この会話は!

「そんなあ、ご謙遜!香奈ちゃん、藤崎はね、ワンナイトラブのキャッチアンドリリースは神だからさ。ちょっと浮気して食い散らかすくらいは許してあげてね?」

「ちょっ……!やめろよ!」

反応を確認するように、新田は俺を横目で見ながらニヤニヤした。
コイツッ!

「ふざけんなっ!香奈ちゃん、こんなヤツの言うことまともに聞かなくていいからっ!」

最悪だ……、一番言って欲しくないことを!
香奈ちゃん、驚いてるよね?こんなの……冗談じゃ済まないよ。
< 192 / 259 >

この作品をシェア

pagetop