残業しないで帰りたい!

香奈ちゃんは俺と新田を交互に見ながらひらすら戸惑っている。

「香奈ちゃん、コイツのことが嫌になったら、いつでも電話してきていいからね」

新田は親指と小指を伸ばして振る電話のジェスチャーをすると、ヘタクソなウインクをして見せた。
その仕草もいちいち古臭くてウザい。

「電話なんかしなくていい!あっ!香奈ちゃん、新田に電話番号、渡されたの?」

勢いよく迫るように聞いた俺に、香奈ちゃんはビクッと驚いて胸元で手を握ると、フルフルと首を振った。

なんだよ!新田め!ハッタリかよ!

新田は焦った俺を見てギャハハッと笑った。

「いいねーっ!女で焦る藤崎、初めて見たよ!こりゃ、いじめ甲斐あるなー。お楽しみが一つ増えちゃった!」

「いい加減にしろよ!」

「俺ね、コイツと二人でずっと悪さしてきたから、コイツのことなら何でも知ってるの。だから、知りたいことがあったら連絡ちょーだい。おにーさん、東京本部の営業2課にいるから。待ってるよーん」

「うるさい!もう俺たちに関わんな!」

「やっだあ!怒っちゃいやーん!翔ちゃん、久しぶりなのに冷たーい!でも、熱々な二人の邪魔しちゃ悪いから、そろそろ行こっかな」

「最初っから邪魔なんだよっ!」

新田はニヤッと笑ってエレベーターに乗り込んだ。

「じゃあ、まったねーん!」

ふざけてガコンッと扉が締まる寸前に手だけを出して振ると、新田は去って行った。

シーンと静まり返るエレベーターホール。

……はあー……。
疲れた……。

ため息をついて香奈ちゃんを見ると、まだ焦点が定まらずに茫然としている。
……いや、茫然としているようで、いろいろと考えを巡らせてる様子。

香奈ちゃん、何を考えてるの?
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