残業しないで帰りたい!

でも。
もしかしたら、香奈ちゃんも不安になったのかな?
俺が本当のことをずっと黙っていたから。

隠していたつもりはなかった……のではなく、君に知られないよう俺は俺の過去を君に隠していたんだ。

香奈ちゃん、本当は俺の心が自分の所にないんじゃないかって、不安に思った?

そんなことは断じてない!

俺はいつも君のことばかり考えている。

君のことが好きで好きでたまらないんだ。

わかってほしい。俺には君だけなんだってこと。

だから、お願い。俺から離れて行かないで……。

不安で押し潰されそうな俺の腕の中で、香奈ちゃんは小さく息を吸った。

「私……翔太くんのこと、大好きだよ?どんな翔太くんも大好き……。だから、翔太くんが本当は他の女の人とも一緒にいたいなら……私……、構わな……」

香奈ちゃん?……好きって言ってくれるのは嬉しいけど、それはつまり俺が他の女といたいなら構わない、と?

ああもうっ!
なに言ってんの?
やめてよ!

「だからそんなことはしないってば!俺は香奈ちゃんだけなの!一筋なの!他の女なんて考えたくもない。本当なんだ!俺が他の女といても構わないなんて思わないで!」

「……うん……」

「本当に!」

「うん……」

「ホントにわかってる?」

「……うん、わかってる……よ?……その、何て言うのか……ホントはね、私、イヤなの。……翔太くんが他の女の人と一緒にいたら、私……きっとすごくイヤ」

香奈ちゃんは涙を溜めて、俺のワイシャツの袖をきゅっと握った。

ああ、ヤバいな、これ。
可愛すぎる。
香奈ちゃん、ヤキモチ妬いてるの?

思わず腕に力が入った。

「大丈夫。そんなこと、しない」

そう囁いて、そっと抱き寄せてから彼女のなめらかな髪を撫でた。
< 196 / 259 >

この作品をシェア

pagetop