残業しないで帰りたい!
いつも君とは本心で向き合っているつもりだったけど。
それでもやっぱり、俺は君にかっこつけていたのかもしれない。
君に嫌われたくなくて、いいフリをしていたんだ。
でも、もう隠さず本当のことを言おう。
俺がどれほど君に救われているのか。
君は俺の全てだってこと。
逃げたりしないってことはわかっていたけど、それでもやっぱり逃げられるのが怖くて、包む腕に力が入った。
そんな俺の動きに反応して彼女はまた不安そうに見上げた。
「ホントに?翔太くん、無理して私に合わせてない?」
「合わせてないよ。俺はどんな香奈ちゃんのことも好きだし、香奈ちゃんが他の男と会ったら俺は耐えられなくて気が狂う。ガキで心が狭いから」
「……」
「でも俺……、昔はね、違ったんだ……。人を好きになるってどういうことか、どんな気持ちか、俺、全然わかんなかった。女の子を大切にしたいなんて、独り占めしたいなんて、考えたこともなかった。……軽蔑するだろうけど、一晩限りの関係の方が気が楽だったんだよ」
「……」
言ってしまった……。軽蔑する?
恐る恐る見つめると、茶色い瞳は揺れていた。けど、変わらず俺を見つめている。
こんな俺のことも目をそらさずに見てくれるだけで嬉しくて、胸に痛みを感じて息を吸った。
「……君に出会って初めて知ったんだ。人を好きになるってどんな気持ちか。恋をするってどんなことか。苦しくて切なくて思うようにいかなくて。でも、楽しくて暖かくて心が踊った。こんな幸せ、俺は知らなかった。君に出会って初めて思ったんだ。誰かを大切にしたい、守りたいって」
香奈ちゃんは潤んだ瞳で俺を見つめたまま、小さく息を吸うと、うつむくようにコツンと額を俺の胸にあてた。
「私……、翔太くんが私を大切にしてくれていること、よくわかってるよ?」
「……うん」
うなずいて彼女を強く抱き締めた。
俺の想い、君に届いているよね?