残業しないで帰りたい!
香奈ちゃんは頬を俺の胸にペタッと擦り寄せた。そんな可愛い仕草、もう誤解はしてない?
……。
でも、一回ここまでの内容をまとめておこうかな。
香奈ちゃん、思い込みが激しいからね。
「香奈ちゃん、昔の俺はバカでどうしようもなかったけど、今は違うんだ。香奈ちゃんに出会って俺は変わった。今は本当に香奈ちゃんだけ。他の女には全く興味ありません。わかった?」
「……久保田係長も?」
「当たり前じゃない!」
「そっか……」
「わかった?」
「うん……」
なんかいまひとつ腑に落ちない顔だなあ。まだ納得できないんだろうか?
「まだ信じてもらえない?」
すると彼女はブンブンと首を振った。
その腕の中の動き、くすぐったくてたまんない。
「そうじゃなくってね、……私、ゆきずりの恋とかそういうの、ちょっとよくわからないけど、恋愛初心者の率直な感想を言わせてもらうと……昔の翔太くん、あんまり自分のことが大切じゃなかったのかな?」
「……」
自分のこと……?
それは……、そうだったかもしれない。
そういえば、そんな話したね?
君が初めてうちに泊まった時、君は自分を好きになれそうって言った。そして、俺もそう言った。自分を好きになれそうって……。
昔の俺は自分のことが好きじゃなかった。いや、自分のことが嫌いだった。
誰にも愛されない、親からも愛されない自分が嫌いだった。
だから、どうでもよかったんだ。
どんな女と付き合おうと、どんな女を抱こうと、どうでもよかった。
女の子たちを大切だと思わないように、自分のことを大切だなんて、考えたこともなかった。
愛さなければ、愛されることを求めなければ傷つかない。
だから、俺は何をやらかしても、ちょっとやそっとのことじゃ傷つかない。
そう思っていた。