残業しないで帰りたい!
息を吸いながら空を見上げた。
「……なにしろ……一目惚れ、だからね」
「……えっ?」
「かっこ悪いし、怖がられるのはイヤだから言わなかったけど、本当はね……、俺、君に一目惚れしたんだ」
「……」
驚いたよね?
そんなに目を丸くするなんて、驚いた顔も可愛い。
でもこれはね、本当のことなんだ。
「入社式で初めて君を見た瞬間、可愛いなって思った。女の子のことを可愛いなんて思ったの、初めてだった。すぐに名前を調べて年齢を見て、若いなあって思った。それから君のそばに座って会話を聞いて、俺と同じ空気を感じてゾクッとした。その場にじっと座っていられなくて、いったん廊下に出るくらい、俺は君に一目惚れしたんだ」
「……そんなの……知らなかった」
俺は自嘲するようにフッと笑った。
「うん、言わなかったからね。俺、前に君のことがずっと気になってた、なんて言ったけど、本当はずっと好きだった。君のことばかり見てたよ。でも、話しかける勇気がなくて、遠くから眺めることしかできなかった。話しかけるのに1年半もかかっちゃった」
「……」
こんなことまで話して、もう隠してること、なんにもないなあ。
「こんな臆病な男はダメかな?」
香奈ちゃんは首を振った。
「ううん、全然ダメじゃない。……でも、どうして私なんかに一目惚れしたの?」
『私なんか』なんて、こんなに俺が想ってるのに、君はまだ自分に自信が持てないの?
「香奈ちゃん、もう『私なんか』は言わないで」
「……うん」
「可愛い香奈ちゃんに俺と同じ空気を感じたから。だから一目惚れしたんだと思う」
「私、可愛くないよ?」
まだそんなことを言ってる。
困った子だね。
もっと体を密着させたくて、腕を回して腰から引き上げるように抱き寄せた。