残業しないで帰りたい!

香奈ちゃんの肩に置いた手をするすると体に巻き付けて、そっと後ろから抱き締めた。

「香奈ちゃん。これからはさ、週末だけじゃなくて平日もうちに来てよ」

「……え?平日も?……んー」

あれ?戸惑ってる。

「嫌?」

「イヤじゃ、ない、けど……」

「いやいや、間違いなく嫌がってるよね?」

「……だって……」

だって?
本当に嫌なんだ!?何が嫌なの?
どうして?

幸せな空気に包まれていたのに、あっという間に不安が広がる。

「だって、何?」

「……」

ずいぶん戸惑ってる。
不安になるから早く言ってよ。

「どうしたの?」

「……えっと、平日だからって、あんなに……しないなら、行ってもいいけど」

「?」

平日だからって、あんなにしないなら?
何のこと言ってるんだ?

……。

あ……。
もしかして。

昨夜のこと?

そっか。
そういうことね?
俺、しつこすぎた?

「別に平日だからってわけじゃなかったんだけど」

「そうなの?」

そりゃそうだよ。

「昨日は特別。香奈ちゃんに今日休んでほしかったから疲れさせようとしただけだよ。むしろ平日はあんなにしません」

「そう……、ならいいよ」

「……」

うーん、なんかなあ。
あっさり「ならいいよ」なんて言われると、かえってちょっかいを出したくなる。

「全くしないわけじゃないよ?」

「……あんなにしない?」

うーん、困ったね。
そんなこと言われると、焚き付けられてむしろ『あんなに』したくなる男心を君はわかっていないんだね?
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