残業しないで帰りたい!
「『あんなに』しちゃダメなの?」
わざと『あんなに』を強調して聞いてみた。
「……ダメだよ」
ぽそっと言った香奈ちゃんの耳と頬がわずかに赤くなってる。
昨夜のこと、思い出したのかな?
そういう反応がいちいち可愛くてたまらない。
ああもうっ!もっと苛めたくなるじゃないか!
「どうしてダメなの?」
「エッ?……だって私、パジャマ着せてもらったのに気がつかなくて。し、下着まで着せてもらったのに、全然気がつかなかったから……。そんなの、恥ずかしいもん」
「服を着るのがどうして恥ずかしいの?」
そういう問題じゃないことはわかっているけど、これまたわざと聞いてみた。
「そっ、そういうことじゃないの!なんていうか、その、とにかく恥ずかしいからダメッ!」
可愛いなあ。今日の朝はきっと、起きたら知らないうちにパジャマを着ていたから、一人で照れたに違いない。そんな香奈ちゃんを想像するだけでたまらない。
赤く染まった耳元に唇を寄せて囁いた。
「ゆうべはあんな姿を見せてくれたのに、服は着替えさせてくれないの?それに意識がないからってじっくり観察なんてしてないよ?」
ボンッと音が聞こえるくらい、香奈ちゃんの頬は一気に赤くなった。
冷たい空気の中、白く凛とそびえる富士山を前にこんなバカなことを言って、罪悪感を感じつつそれを楽しんでいる俺は本当にアホだ。
「翔太くん、悪趣味だよ!そんな意地悪言って!」
「だって香奈ちゃん可愛いんだもん!たまんなく可愛い!」
思わず後ろからぎゅうっと強く抱き締めて、体を左右に振ると、香奈ちゃんはジタジタと小さく抵抗した。
「そんな意地悪言うなら、もう行かないよっ!」
「ごめんごめん。もう意地悪言わない」
「嘘だねっ」
「本当にもう言わない。だから平日も来て?時々でいいから」
「……」
あらあら、黙っちゃった。
意地悪しすぎたかな?