残業しないで帰りたい!
青山さんには申し訳ないけど、しれっと当たり前のようにお願いするしかないよな……。
「青山さん、ごめーん!頼むのすっかり忘れてたんだけどさ、子ども向け学習セットの資料とサンプル、作ってもらっていいかな?」
「え?あ、はい」
青山さんの茶色い瞳は「え?こんな時間にですか?」って言ってるみたいに見える。
……ごめん。
「小学一年生向けね。明日イベントがあって、朝イチで持ってかなきゃいけないんだけど、俺また外に行かなきゃいけないんだ」
「わかりました。何セット作ればいいですか?」
「300セット。悪いけど段ボールに入れて車の後ろに乗っけといて。車は3号ね」
青山さんは表情を曇らせつつ、笑顔でうなずいた。
「わかりました」
そうだよね?300セットは多いよね?
ホント、ごめん!って心の中で手をあわせて謝った。
青山さんはいい子だと思う。大人しくて、真面目に仕事をこなしていて。
ただ、あまり目を合わせてくれない。
避けられているって感じでもないけど。
青山さんは、もともと男を寄せ付けないオーラのある子だ。
まあ、俺にとっては別にどうでもいいことなんだけど。
でも、今回はさすがに悪いことをした。
それなのに、素直に謝ることができなくて、次の日出勤してきた青山さんに遠くから声をかけた。
「青山さーん、昨日はサンプルありがとねー」
「……いえ」
青山さんは困惑した顔をしていたけど、俺はそんな彼女の表情を振り切るように笑顔で手を振って、車の鍵を手に外へ出た。
勢いで外に出ちゃったけど、朝イチとはいえ今から出たら早すぎるんだよな。
とりあえず地下に行って社用車に乗ろう。