残業しないで帰りたい!
車の後部座席を確認すると、段ボールに入ったサンプルがきちんと並んで乗っていた。
青山さん、やっぱりちゃんとやってくれたんだね。
車に乗り込み、エンジンもかけず、ハンドルに腕と頭を預けてため息をついた。
あーあ、何やってんだか。
青山さん、きっと残業してやってくれたんだろうな。悪いことしたな……。
ゴンゴンッ!
突然の車の窓を叩く音に、驚いて勢いよく顔を上げた。
白石さん!?
横を見上げると、車の外で窓を叩いているのは白石さんだったから、また驚いた。
俺が気が付いたのを見ると、白石さんは車を回り込んで助手席の扉を勢いよくバンッと開き、助手席にドスンッと座った。小さい体のはずなのに、勢いで車が揺れる。
白石さん?何しに来たの?
これはどういう展開?
白石さんが俺の横に、助手席に座ってる……。
まあ顔が怒ってるから、きっと昨日のことを怒りに来たんだろうな。
でも……。
そんな風に怒られることにすら期待するバカな俺。
怒られてでも君と関わりたい、なんて。
結果的に車に二人きりなんて、嬉しい状況なわけだし。
プリプリとほっぺたを膨らまして睨んでる君が可愛くてたまらないんだ。
「峰岸君!昨日のアレ、何なの?頼むの忘れてたからって、あんな風に当たり前みたいに頼むなんて、ひどくない?」
「……ごめん」
「謝るなら青山さんに謝りなよ!だいたいさ、ちょっとでもいいから一緒にやれっての!」
「本当は一緒にやりたかったんだけど、昨日はどうしてもできなかったんだ……。白石さん、手伝ってくれたの?」
「当たり前じゃん!あんな大量のサンプル一人じゃ大変だもん。峰岸君、私たちの仕事のこと、全然わかってないでしょ?青山さんは大丈夫だって言ってたけど、絶対遅くまで残ってやってたんだと思うよ!」
一気にまくしたてる白石さん。
怒られてるのはわかってるけど……。
怒ってる君もやっぱり可愛いと思う、バカな俺を許してほしい。