残業しないで帰りたい!
「報告はするけど、判断するのは俺じゃないからね」
「無責任だねえ」
「そんなことはないよ」
俺は縮小してでも横浜支社は残すべきだと思っている。
香奈ちゃんがいるから?
横浜に思い入れが強くなったから?
そうではない。
人口減少のご時世にもかかわらず、横浜の特に北部エリアは人口増加傾向にある。
若い核家族世代も多いから今後の伸びしろは十分あると考えてもいいだろう。その辺りの正確な試算をするのは俺の仕事じゃないけれど。
それに、東京の二番煎じ、なんて言っても横浜はやはり莫大な人口を抱える大都市だ。支社がないのは厳しい。縮小してでも継続すべきだ、と俺は思う。
ビルなら半分は貸してしまえばいい。まあ、貸すのは煩雑だし固定資産を手放したいっていうのもあるんだろうけど、自社ビルを手放すってのはイメージダウンじゃないだろうか。
……なーんて、人事課長の俺に口出しできることじゃない。
報告はするけど、出すぎた真似だと叩かれるだろう。別に俺は叩かれてもいいけどさ。
そういう情勢や地域の傾向を分析した上で営業戦略を立てられないことが横浜支社営業課の成績不振の原因の一つだ。
今日の管理職会では営業課長の横井さんが営業戦略を発表する。だから今日は休めないと思っていた。いちおうそれを聞いてから報告を確定させようと思っていたから。
でも、横井さんの営業戦略には正直全く期待していない。起死回生の戦略発表ができるくらい実力があるなら、そもそもこんなことにはならなかったんだ。
俺の報告書もほぼ完成している。
新田がフーッと煙を吐いた。
「松永さん、大阪から戻ってくるんだってさ。間違いなくお前、東京に呼ばれるよ」
「……そっか」
松永さん、噂通り戻ってくるんだ……。松永さんが戻ってくるなら、俺はきっと東京に呼ばれるだろう。