残業しないで帰りたい!
これでやっと営業に戻れる。
嬉しいけど、複雑……。
横浜から離れたら、香奈ちゃんとも離れることになってしまう。
それに、横浜にもう少し住んでいたい、なんて思う。横浜のこと、好きじゃなかったくせに。
彼女が生まれ育った街というだけで、一緒に楽しく見て回ったというだけで、強い愛着を持ってしまった。
俺も単純だな。
「越川本部長は全然ダメだったね。まあ、みんなもなんとなく予想はしてたけどさ。これからは松永さんの巻き返しじゃない?」
「ふーん」
「なあに?お前、興味ないわけないだろ?」
「ん?そりゃあもちろん興味はあるけどさ。松永さん、久しぶりだなと思ってね」
「けっこう長いこと大阪に行ってたもんな」
「うん」
松永さんにはこの会社にアルバイトで入った頃からお世話になっていた。
その当時の社長は強烈なワンマンだった。
社長は好き嫌いが激しく、社員も上下に関係なく好き嫌いで扱った。
そんな社長のすぐ下で働く松永さんは、本当に大変だっただろうと思う。
社長は松永さんを信頼し、いつもそばに置いていた。そして、松永さんの下で働くアルバイトの俺のことも、ついでのように可愛がってくれた。
社長は機嫌がいいと俺たちを寿司屋やキャバクラに連れて行ってくれた。
学生だった俺には初めてのことばかり。
きらびやかな大人の世界に足を踏み入れて少し調子に乗った感覚もありつつ、背伸びをし過ぎてついて行くだけでも必死だった。
そして、社長について行くと、時折とんでもない光景を目にすることがあった。