残業しないで帰りたい!
納得はできないけど、なんとなくわからないでもない。
まあ二人が別れなければ何も問題はなかったんだろうけど。
母親とは終わっていた……か。
親父のヤツ、さらっと言ってくれたけど、なんか身も蓋もない言い方だな。
二人に何があったのか、俺にはわからない。
里美さんと親父と母親の間に何があったのかもわからない。
ただ、俺は親父の二の舞にはならないようにするよ。
「まあ、お前が本当に彼女を守りたいなら、嘘なんかつかせるなっていう話だ」
「……なるほどね」
わかってる。
だから、誰だかわからない神に誓おう。
俺は一生涯彼女を守ります。そして、彼女が嘘をつかなければならない状況になんて陥らないよう守ると誓います。
……そんな特殊な状況、普通はないけどね。
結婚式に来れば遊馬に会えるよ、親父。
自分の息子に会えないなんて、俺はそんな人生まっぴらごめんだ。
そうならない人生を送りたい。
俺たちが少し沈黙したところへ、楽しそうにキャッキャと話しながら里美さんと香奈ちゃんが戻って来た。
「翔太くん、今日は香奈さんがオムライス作ってくれるって!」
「楽しみにしててねっ!」
「はは、ありがとう」
親父のいたずらっぽい視線を気にしつつ、知らないフリをしてぎこちなく笑った。
実家に戻ってこんなに親父と話すことになるとは思わなかった。
今日改めて、知らなかった親父の表情を幾つも見たのは、俺が今まで見逃していたからだろうか。
それとも単に親父が年を取ったから?
実家への挨拶は、香奈ちゃんの紹介のためだと思っていたけれど、実は俺自身の区切りだったのかもしれない、なんて思った。