残業しないで帰りたい!

確かに俺、香奈ちゃんのこととなると金に糸目はつけないけど、それって無駄遣いなのかな?

最近香奈ちゃんはお金にシビアだ。課長は残業手当が出ない、ということを知ってから急にシビアになった気がする。

残業手当が出ないことを知った時、香奈ちゃんはすごく驚いていた。

「えー!?あんなに残業してるのに?残業手当出ないの?」

「うん、知らなかった?でも、その代わりに管理職手当が出てるからね」

「知らなかった……。それならどうしてあんなに残業するの?」

「どうしてって、そりゃ仕事だからねえ。必要があれば残業するさ」

「……なんか翔太くん、ブラック企業時代のやり方が染み付いちゃってるんじゃない?タダで残業するなんて」

「いやいや、そういうのも含んでの管理職手当なんだよ?」

「ふーん……、なんか翔太くん、大変だなあ」

香奈ちゃんは俺をねぎらってくれているのか、会社組織の仕組みに納得していないのか、よくわからない表情をした。

あれから香奈ちゃん、シビアなんだよなあ。もしかして俺がもっと稼いでると思ってた?
だとしたら、なんか……ごめん。

そして今、美しいドレスを着て輝いた立ち姿の香奈ちゃんに、俺はなぜか無駄遣いを叱られている。

婚約指輪は無駄遣いじゃないと思うんだけど。香奈ちゃんだって涙を流して喜んでくれたじゃない?

瑞穂さんの視線を感じたからチラッと見ると、微妙な感じで目があった。

「で、でもさっ、香奈!ウエディングドレスくらいはいいんじゃない?一生に一度のことなんだし」

「そうだよ、香奈ちゃんすごく綺麗だよ」

「うーん……でも、これからの生活のことも考えないといけないし、贅沢は禁物です」

香奈ちゃん……?もしかして、君は勘違いをしているのかな?
俺、残業手当は出ないけど、生活に困るほど薄給じゃないよ?今度ちゃんと給与明細を見せてあげるから。

「香奈ちゃん、そのくらいは贅沢してもいいんだよ?俺、着たいドレスを我慢してもらうほど薄給じゃないから安心して!」

「そうだよ香奈!そこは我慢するところじゃないよ?」

「う、うん……」

二人で懸命に説得した結果、香奈ちゃんは最終的にその美しいウエディングドレスを着ることに決めた。
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