残業しないで帰りたい!

結婚式当日。
見上げると雲一つない青空が広がっていた。晴れ男というか、俺も香奈ちゃんも天候には恵まれている気がする。

式場のエントランスでは、親父が何十年振りかに会う遊馬と話をしているのが見えた。横で着物姿の里美さんが涙を拭っている。
遊馬は少し複雑な顔をしていたけど。

その後、親父は嫌がる5才の孫を無理して抱き上げていた。
意外だなあ。親父も孫を抱きたいなんて思うんだ……。

式が始まる前、控え室で香奈ちゃんが優香さんたちに、両親にするあのお決まりの挨拶をしようとすると、優香さんは猛烈な勢いでバタバタと手を振り「やだやだっ!いいから!そういうのやめてっ!」と言ってやめさせていた。
優香さんは香奈ちゃんの言う通り、照れ屋なのかもしれない。 

ウエディングドレスを着た香奈ちゃんは本当に綺麗だった。
こちらが怖じけづいてしまうくらい、肌の内側から光を放っているかの如く美しかった。

優香さんたちが控え室を出た後、ほんの少しだけ二人になる時間があったから、正面に立ってじっと見つめた。

「香奈ちゃん、本当に綺麗……」

香奈ちゃんはにっこり笑った。

「翔太くんもすごくかっこいいよ」

ウエディングドレスを着ていても香奈ちゃんの笑顔はいつも通りおっとりしていて、そしてキラキラと輝いていた。

そんな香奈ちゃんを見ていたら、つい王子を演出してみたくなった。

片ひざを床につき、香奈ちゃんの白い手袋をした手をそっと取る。

「これから教会で神様に誓うけど、そんなものに意味はないから今、君に誓う。俺は死ぬまであなたを愛し続けると誓います」

そう言ってから、香奈ちゃんの手の甲に白い手袋の上から口づけた。
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