残業しないで帰りたい!

ほっとして香奈ちゃんの手を握ると、俺たちの間にまた別の看護師が割り込んできた。看護師はその手には小さな赤ん坊を持っている。

……それって、俺たちの子?

「はーい、お母さん、お待たせしました。元気な男の子ですよー。おめでとうございまーす」

香奈ちゃんの胸の上にペタッと乗せられた小さな赤ん坊は全然赤くなくて、むしろ白くてシワシワだった。

「はははっ」

香奈ちゃんは弱々しく笑った。

おや?
泣き虫な香奈ちゃんはきっと感動して泣くだろうと思ってたけど……。笑ったね?

「……思いのほかずっしり重たいなあ」

そっと触れながら赤ん坊を見つめる香奈ちゃんの瞳はすごく優しかった。

「はーい!じゃあ次は旦那さんの番でーす。どうぞー」

「!?」

ええっ!いきなり?
まだ心の準備が……。

おろおろするのもお構いなく、考える間も与えられないまま、看護師はにこにこと勢いよく俺に赤ん坊を渡してきた。

ど、ど、ど、どうやって抱くのよ?

とりあえず、横抱きに抱く。

小さいっ、軽いっ、壊れそうで怖いっ。
むよむよしたわずかな動きでも落としそう。

これが……、俺の子なの?
まだ目も開かない、白くてシワシワの子。

髪も生えていて、極々小さな手の指もあって、ちゃんと人の形をしている。

……不思議だなあ。

この子が香奈ちゃんのお腹の中から俺に蹴り返してきていたんだ。

赤ん坊が小さく動いて「はぁっ」と弱々しく声を出したのを、あっ可愛い!と思った途端、慣れた手つきで「はーい、では失礼しまーす」と看護師にスッと赤ん坊を取り上げられてしまった。

「それでは今日はいったん新生児室でお預かりしますねー」

「あ……、はい」

香奈ちゃんは名残り惜しそうな顔をした。
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