残業しないで帰りたい!

俺は嬉しいけど。

いや……超嬉しいんだけど!

白石さんが作った弁当を食えるなんて。

「じゃあ……、遠慮なく、いただきます」

そっと大切に弁当箱を手に取る。

ずいぶん小さい弁当箱だな。
こんな量でよく腹いっぱいになるもんだ。

じゃあ……、まずは卵焼きから。

卵焼きを箸で取った時に気が付いたけど、なんか白石さん、食べようとする俺をじっと見てるんだよな。
反応が見たいのか?

それはそれで緊張するが、とりあえずパクッと一口食べてみた。

うんうん。
君んちの卵焼きは甘口なんだね?

「うまいよ」

「甘すぎる?」

「いや、甘くてうまい」

「ホント?良かったー」

白石さんはすごく嬉しそうに弾けるような笑顔を俺に向けた。

ヤバい……。
ズキンと胸が痛む。

そんな笑顔、しないでくれない?

これって胸キュンだ。

こんなに胸の痛みを感じたら、引き返せなくなる。

想いを止められなくなる。

その後も、白石さんは俺が一口食べるごとにじっと見つめて「うまい」って言うと、嬉しそうに笑った。

君の笑顔は眩しくて、嬉しくて苦しくて胸に刺さる。

俺にとって、君の笑顔は幸せそのものだ。

ズキズキと疼く胸の痛みに耐えながら、君の弁当を一口一口味わった。

この気持ちはなんだろう。苦しくて切なくて、たまらない気持ちになる。

この時間がずっとずっと続けばいいのに……。
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