残業しないで帰りたい!
「ごちそうさま。白石さんって料理上手だね?本当に全部うまかったよ。ありがとう」
「いえいえ、お粗末さまでした」
弁当箱をそっと返すと、白石さんは照れくさそうにはにかんだ。
そして、悩んでいるような顔で何かを言いたそうに視線を泳がせた。
「どうしたの?」
「……今週の金曜日ね、また、デートなんだ」
俺は目を見開いて、ピタッと動けなくなった。
なんで?
なんで今そんなこと言うんだよ!
俺は今、君の最高にうまい弁当を食って最高に幸せな気持ちだったのに!
一気に奈落の底まで突き落とされた気分だよ!
持ち上げて落とすなんて、君は悪魔なのか?
でも、君に翻弄されているなんて知られたくないから、俺は完全に平静を装う。
「ふーん。白石さん、そいつと付き合うことにしたんだ?良かったじゃん」
「ち、違うよっ!付き合ってはいない!」
付き合ってはいない?それなのに、またデートに行くのか?
君はその男のことをどう思ってるんだ?
「付き合ってなくても、金曜日にはデートなんだろ?そんなにいい男なんだ?」
「……うーん。いい男っていうのかな。なんかね、その人ハッキリ言う子が好きなんだって。珍しいよね?」
「へー……、珍しいか?そんなヤツ、いくらでもいるんじゃねーの?」
俺は……。
俺は、君のハッキリ言うところも、正義感が強いところも、お節介なところも、でっかい声も全部全部好きなのに。
俺は君だったら、どんな君だっていい。
こんなに君を想っているのに。君は俺には見向きもせずに、他の男とデートに行くんだね?