残業しないで帰りたい!

翌日、申し訳ないことに、また青山さんに大仕事をお願いすることになってしまった。

先輩が積算を間違えてサンプルが足りなくなったのに「お前が頼んでこい!」と理不尽なことを言われてしまったからだ。

昨日早退したという青山さんは、左手に包帯を巻いていた。倒れた時に怪我をしたって、白石さんも言ってたっけ。

もう平気なのか?

「青山さん」

声をかけると、青山さんは振り返って立ち上がった。

青山さんは女子にしては背が高い。
藤崎課長はこのでかい青山さんを抱き上げたんだ……。すごいな。恋の力か?それとも普通に力があるのか?

実はこの間、俺の間抜けな計画のせいで青山さんに迷惑をかけてしまった少し後、藤崎課長に声をかけられた。

「峰岸くん?ちょっといい?」

「あっ、はい!」

振り向くと、藤崎課長が相変わらずやる気のなさそうな雰囲気で立っていた。

俺も平均よりは背丈のある方だと思うけど、藤崎課長はそんな俺よりもでかい。
そのくせなんでそんなに顔が小さいんだ?おかしいだろ!

「この間、支援の子にサンプル頼むの、忘れてたの?」

「あっ、ハイ……。すんません」

青山さん、人事課が最近やってる残業の見回りに遭遇しちゃったんだな。そんなに遅くまでやってたんだ。悪いことをした……。

「せめて一緒にやってあげないとね?あんな量を一人でやらせたらかわいそうでしょ?一人で残業なんてさせちゃダメだよ」

「すんません」

藤崎課長が注意をしてくるなんて、かなり珍しい。俺は初めてだ。

「うちが残業を削減してんの、知ってる?支援の子にあんな残業、もうさせないでよ」

「ウッス」

うちの会社の営業は体育会系だと思う。でも、藤崎課長はうちの男子社員同士だとありがちな体育会系の話し方をしない。ソフトというか、優しいというか、頼りない感じの話し方。

でも、あの時の藤崎課長は目が怒っていた。威圧感があって、他の上司に怒られるより怖かったかもしれない。

今考えたら、あれは青山さんに残業をさせたから怒ってたんだな。
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