残業しないで帰りたい!
それなのに、また青山さんに無理なお願いすることになってしまった。
藤崎課長の耳に入ったら、また怒られるかもしれないな。
「いつも急でごめんね。悪いんだけど、千セット作ってほしいんだ。みんなでやってもらっていい?俺からも高野係長には言っておくから」
「わかりました」
青山さんは困った顔で、でもにっこり笑ってうなずいた。
それにしても……。
こんなとんでもないお願いをしたら、白石さんは「コラー!」とか言って、絶対に食ってかかってくるだろうな、なんて期待していたんだけど。
青山さんと俺の会話は聞こえているはずなのに、白石さんは背中を向けたまま、何も言ってこなかった。
なんだよ。
……元気、ないのか?
絡んでほしかったのに、残念だな……。
何かあったのかな?
心配だったけど急いでいたし、そのまま部屋を後にした。
そして、昼過ぎに見本市から大急ぎでサンプルを取りに戻ると、青山さんはちゃんと台車に段ボールを乗せて待っていてくれた。
えっと、白石さんは?
キョロキョロ探したけど、彼女の姿はどこにもない。俺があんまりキョロキョロしたから、青山さんは不思議そうな顔をした。
「どうかしましたか?」
「いや……、何でもないよ。こんな数、急ぎで仕上げてくれてホント、ありがとね」
「いえ」
青山さんに手を振って、台車を押してエレベーターホールに向かった。
白石さん、見当たらなかったな……。
朝も元気がなかったし。
どうしたのかな?
ポーンと音が鳴ってエレベーターの扉が開いたから、ガラガラと台車を押して乗り込んだ。
ガコンッ!!
「っ!」
扉が閉まる瞬間、勢いよく白石さんがズサーッと走り込んできた。
えっ?えっ?
なになに!?
いきなりのことに驚いて固まる俺の横に、白石さんはスッと当たり前のように並んだ。