残業しないで帰りたい!

「……白石さん?……どう、したの?」

「量が多いから、車に乗せるの手伝ってあげるよ」

いやいや、こんな細腕の女の子に力仕事は手伝わせられないでしょ?そのくらいわかるよね?

元気がないわけじゃないのかな?

なんだろう?
何か話したいの?

まさか、またデートの話?
だとしたら、嫌だな。
聞きたくない。

でも。
少しでもそばにいたくて断れなかった。

「……そう?ありがと」

エレベーターの扉がガタンと閉まる。

「実はさ」

白石さんはうつむいたままつぶやいた。

やっぱり何か話をしたかったんだね?
友達としての俺に……。

「どうしたの?」

「ちょっと迷ってるんだよね」

「何を?」

「……デートに行くべきかどうか」

やっぱりデートの話か……。
迷うなら行くなよ。
そいつは本気だよ?

「なんで迷うんだよ?そいつはきっと本気で誘ってると思うよ?」

「……うん。だからね、どうしたらいいのか、わかんないの」

また、わかんない、だ。

「そいつのことを好きになれるかどうか、わかんないの?」

「んー……、そだね」

じゃあ、行くなよっ!
って言いたかった。

でも、言えなかった。
俺がそんなこと言ったって、俺はただの友達だからな。

「嫌なら断ればいいだろ?でも断らないってことは、白石さん自身、そいつのこと悪くないって思ってるんじゃないの?」

「そういうわけじゃっ、ないもん……」

白石さんは、ムキになって勢いよく俺を見上げたけど、語尾はだんだん小さくなった。
そんな風にムキになるなんて、かなり気持ちが傾いてるんじゃないの?

そいつのことが原因で元気がなかったの?
その男のこと、どうしようか本当に悩んでるんだ?

すぐ斜め下に見える彼女の小さな頭。ふんわり柔らかそうな髪。
その頭の中の大部分をその男が占めていると思ったら、グッと胸が痛くなった。

苦しすぎるよ。

他の男のことで悩む君を隣で見ていることしかできないなんて。
情けなくて不甲斐なくて、きつく唇を噛みしめた。
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