残業しないで帰りたい!
えぐるような胸の傷みをじっと堪えて黙っていたら、エレベーターが地下に着いてしまった。
「手伝わなくていいよ。俺一人でできるから」
これ以上話を聞きたくなくて、逃げるように少し強めの口調でそう言うと、彼女の方を見もせずに台車を押して外に出た。
俺が強く言ったせいか、白石さんはエレベーターから出てこなかった。
でも、扉が閉まる寸前に大きな声を出した。
「7時にロイヤルサージの最上階なんだっ!」
最後に放った白石さんの声を飲み込むように、エレベーターの扉がガコンと閉まった。
「……」
なんでそんなこと、俺に言うんだよ?
君が男に口説かれる場所なんて、知りたくもないのに。
……。
……?
これって……、もしかして。
……いや。
そんなこと、あるわけないよな……。
でも。
今思えば、白石さんは辛そうにうつむくことが多かった。
あの男の話をする時、白石さんの声は小さかった。
沈んでいるのは、悩んでいるからだと思ってたけど。
君がもしその男のことが好きだったら、もっとでかい声で楽しくはしゃいでいたんじゃないのかな?
もっと容赦なく、その男のことをのろけてたんじゃないのかな?
俺は……。
俺はもしかして、大馬鹿者だった?
自信なんて全然ない。
バカなことをしたら、もう君とは友達ではいられないかもしれない。
でも。
俺は、君のことを……。