残業しないで帰りたい!

藤崎くんは、付き合ってみたら本当に面白くない男だった。

最初は彼を連れて歩いてるだけで周りから注目されて、すっごい優越感を味わえた。
まあ、美男美女だから当然だよね?なーんて思ったりして。

でも、そんなの最初だけで……。

藤崎くんは何でもお願いを聞いて叶えてくれる優しい王子様。だけど、ただそれだけ。
自分からのアクションは一切ない。

「このレストランに行きたいなー」

「いいよ」

「ここにドライブ行ってみたーい」

「いいよ」

「腕組んでもいい?」

「いいよ」

アンタは「いいよ」しか言えねーのか!

私の願いは叶えてくれても、全然私のこと見てくれないじゃない!

そんなのすごく……悲しいんだから。アンタは女心が全然わかってない。

いつも話してるのは私ばっかり。藤崎くん、聞いてるフリをしてるけど、ホントは全然聞いてないんでしょ?

セールスのコツを聞いてもやっぱり「しつこいからだろうねえ」って、前と同じ答えだし。
腹立つなっ!

藤崎くん、私のことなんて、全然興味ないんでしょ?

コイツといると辛くなる。

……好きな分だけ、辛くなる。

私一人で空回りして。

私としたことが、何やってるんだか。

それに……。
藤崎くんは、自分から私に触れてくることもない。

私ってそんなに魅力ない?
散々ちやほやされてきたのに、正直、自信がなくなるよ。

私のこと、女としてどう思ってるの?
触りたいって思わないの?
抱きたいとか思わないの?

そうだよ!

体が繋がれば変わるのかもしれない。

私のこと、好きになるかもしれない。

もしかしたら好きで好きで、どうしようもなくなっちゃうかもよ?

そう考えた私は、浅はかだったんだろうか。

今でもそれはわからない。

でも、普通はそう思うんじゃないのかな。
好きな人に触れたいって。
好きな人に私の全部をあげたいって。

私の全部をあげたら振り向いてもらえるかもしれない、なんてバカなことを当たり前のように思っちゃったりするんだよ……。
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