残業しないで帰りたい!
あ、でも。
これで煽ってみようかな。
ちょっとイタズラっぽく覗き見る。
「ホントかなー?」
でも、藤崎くんは表情を変えなかった。
「……煽ってるの?やめてよ」
なんかバッサリだな。
コイツ、本気で何もしないつもりなんだ……。
なんなのよ。
なんかもう、意地になってきた。
「どうして、抱いたら好きになれなくなる、なんて思うの?恋人なら普通のことなんじゃないの?」
「……恋人ね」
藤崎くんは困っているように見えた。
困るってどういうこと?
だいたいこれって困ること?
「久保田さんは俺に何を望むの?」
出た!変な質問!
藤崎くんは時々こういう変な質問をする。
「それはやっぱり……素敵な王子様、かな」
だってアンタ、見た目が王子様なんだもん。
「具体的じゃないなあ」
「具体的?たとえば優しかったり、紳士だったり、ぐいぐい引っ張ってくれたりとか?」
「ふーん……、なんかよくわかんない」
「だからさ、王子様だよ。わかんない?」
「いや、わかってる。よく言われるから」
言い終わるやいなや、藤崎くんはいきなり私をベッドに押し倒した。
「!」
ヤバッ!
いきなり組み敷かれて不意打ちだったのもあるけど、その瞳、色っぽすぎる……。
こんな藤崎くん、見たことない。
ドキドキして、鼓動が耳に響く。
私としたことが……。
「同じ会社の人だから、真面目に好きになろうと思ってたんだけど……」
ん?
今度は何を言ってるの?
真面目に好きになるって何?
それに同じ会社ってところがポイントなわけ?
アンタ、時々言うことがズレてんのよ!
イラッとしたけど、私の頬にサラリとかかった髪の感触と、首筋を滑る唇の柔らかさに、私はすぐに後悔した。