残業しないで帰りたい!
今の彼は、5つ年上の派遣先の係長。真面目でプライドが高くて、厳しいけど優しい人。
仕事から離れて二人で会っていても、シャイな彼はあまりストレートな愛情表現はしない。
マメじゃないし、時々物足りなく感じることもある。
でも、私を好きでいてくれてるってことはヒシヒシと感じる。彼の優しさを感じる。
私は彼が大好き。
係長になったばかりで、一生懸命頑張ってる彼を支えたいって心から思う。
そんな彼に、私の黒い怨念は見せたくない。
こびり付いた醜い怨みは洗い流して、真っ白な心で彼に会いたい。
だから私は、彼と二人で会う前に元カレのバーへ行く。怨む気持ちを元カレの所に置いてから彼に会いたい。
今日もいつも通り、彼と会う前に元カレの店で一杯だけカクテルを飲んで、気持ちを切り替えて店を出た。
でも、扉を閉めて階段を降りた所で思わず目を見開いて立ち尽くしてしまった。
「……哲也?」
ガードレールに腰かけていたのは今の彼、哲也だった。
どうしてここにいるの?
この場所、知らないはずなのに。
それにこの時間なら、いつも残業してるよね?
「どうして……?」
「どうしてここにいるんだ?」
哲也は立ち上がると、私の質問は無視して強い口調で聞いてきた。
でも、ここに元カレがいるなんて言えない。
「なんで元カレになんか会いに来てるのかって聞いてんだ!」
「!」
珍しく哲也が語気を荒げたからビクッとする。
なんでこの店に元カレがいるって知ってるの?哲也、私が元カレに会いに来てるって知ってるの?
……どうして?
それにどうして会いに来てるのかなんて、もっと言えない。
困って唇を噛んでうつむいた。