残業しないで帰りたい!
「まだ好きなのかよ!そんなに忘れられないのか?」
「ち、違っ!」
そうじゃない!
違うっ。
私は哲也のことが好きなのに!
「違うなら、何で会いに来てるんだ?」
「それは……」
哲也は歯をくいしばって苦しそうな顔をした。
「瑞穂、お前……。お前っ、まだあの人の子どもがほしいのかよっ!」
「っ!」
あまりの驚きにヒュッと息が肺に入った。
目を大きく開いて固まる。
なんで?何でそんなこと、言うの?
なんで……?
「……真鍋さんに会って、直接聞いたんだ」
目を見開いたままの私に、哲也は静かな口調で言った。
そんな……。
哲也、なんであの人に会ったりしたの?
それにあのデリカシーのないお喋りっ!
哲也にそんな話をするなんて!
酷い!酷いよっ!
私は泣き叫ぶような金切り声をあげた。
「違うっ!そんなんじゃないっ!酷いよぉ!」
大きな声で叫んだら、喉に傷が付いて痛んで、涙がぽろぽろ落ちてきた。
「……ごめん、言い過ぎた」
「……」
哲也……あの話を聞いたの?私が流産した話。
……そんなの、酷いよ。
「瑞穂が元カレに会いに行ってる、なんて噂を聞いたんだ。でも、そんなの見間違いだろって思ってたのに……。本当だったから、ついカッとなった。……ごめん」
そっか……。
そうだよね……?
彼女がこっそり元カレに会いに来てるなんて、そんなの、イヤだよね?傷付いたよね?許せないよね?
でも、会いに来てるのは未練があるからじゃない。
私の痛みを忘れさせないために……。
「瑞穂……、もうこんな、自分を痛めつけるようなマネはやめろよ」
「……」
違う。
私は彼を傷付けたくてやってるの。
自分を痛めつけるつもりなんて……。