残業しないで帰りたい!

入院生活は想像以上に忙しくて、私は会社を休んで彼のそばにいることにした。

先生の説明を聞いたり、保険会社とやり取りをしたり、会社と連絡をしたり。それはまるで彼の身辺を整理しているように思えて、たまらなく辛かった。

それでも私は毎日綺麗なお花を飾って、彼に微笑みかけた。

慌ただしい中で、私たちは大事なことをちゃんと話せたのかな?

彼が私を深く深く愛してくれていたことは、身に沁みてよくわかっていた。

そんな私に香奈ちゃんを託すこと、私に重荷を背負わせることに、彼が強い罪悪感を持っていることもわかっていた。

それでも私に託さざるを得ない状況。
彼は私に何度も謝った。

でも、もう謝らないで欲しい。
私たちは私たちの時間を過ごそう?悔いのない時間を過ごそうよ!

でも、砂時計の砂はサラサラと止まることなく落ち続ける。

時間は容赦なく過ぎていき、そして彼は死んでしまった。

嘘でしょう?

覚悟していたはずなのに。
全然信じられなかった。

悲しくて寂しくて、彼がもういないなんて信じたくなくて、背筋が凍りつくような底なしの寂しさが振り払えなくて、私は大声でわんわん泣いた。

そんな私を、香奈ちゃんは静かに涙を流して見ているようだった。

香奈ちゃん?お父さん、死んじゃったんだよ?わかってる?
声も出さず静かに涙を流す香奈ちゃんが、私はとても不思議で怖かった。

何を考えてるのかわからない子。
彼に頼まれた大事な子。

でも、それだけじゃない。
私はこの子を傷付けた。

私はこの子と一緒に生きていくの?

本当は、私にとって香奈ちゃんの存在はかなり重荷だった。
血の繋がりのない子。この子、私に一生付いて回るの?

それって、どうなの?

でも。
彼に託された。

私は愛する彼と約束した。
香奈ちゃんのことは任せてねって私は言った。その言葉を嘘にしたくない。

だから、この子と一緒に生きていこう。

一度覚悟を決めたら、急に気持ちがサッパリした。
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