残業しないで帰りたい!

よく知りもしない、好きでもない女の肌に平気で触れていた自分がわからなくなった。

女の子から誘われて、まあいっかって思った。目的が一致したから抱いただけ。

なんだろう、その薄っぺらい感覚。

初めて自分のことを気持ち悪いと思った。

女なんて、ただ体を抱ければいいと思ってた。ただの欲望のはけ口だと思ってた、その俺の感覚。
……気持ち悪い。

昨日抱いた女の子にも名前があって、背景があって、心があったんだ。そんなの当たり前のことなのに、考えもしなかった。

そんな当たり前のことが俺の中では欠落していたっていうの?

そうだよ……、欠落していたんだ。

一晩限りの女の子はもちろん、付き合ってた女の子のことも、その心を、背景を深く知りたいなんて、考えもしなかった。

……それってどうなの?

俺ってもしかして……ろくでなし、なんじゃないの?

女を取っ替え引っ替えしてた親父と何も変わらないんじゃない?

サイテーでどうしようもないろくでなし……。

親父みたいにだけはなりたくないって思ってたのに……。これじゃあ何も変わらない。

ホント、……最悪だ。

でも。
もう、他の女に触りたいなんて思えない。

彼女だけを、青山さんだけを触りたい……。

……。

……?

いやいや、ダメダメ!
それはそれで問題あるだろ!

ダメなんだよ!彼女はダメ!
俺には若すぎる。

新入社員だし。
俺、上司だし。

それにすごく純真な雰囲気だった……。
なんか、神々しくて近づけないよ。
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