さくら
「生きてるうちに坊ちゃんには会えへんと思ってましたわ」
「オーバーやなあ。大体100まで生きそうやのに」
桜子がクスクス笑う。
「来週には医院を再開したいと思ってるし、またウメさんにも手伝ってもらうから」
「年寄りをこき使う酷い坊ちゃんだ」
「ボケなくていいって娘さんが喜ぶよ。な、桜子」
志信が桜子の方を見ると、桜子が瞳いっぱいに涙を溜めている。
「桜子!?」
「ごめーーーー嬉しくて・・・・・」
堪えきれなくなった涙が桜子の頬を濡らす。
「アホやなあ」
「だって・・・・・院長先生喜ばはると思って・・・・・」
志信が桜子の前髪ををくしゃりとかきあげた。
「お前にもしっかり働いてもらうからな。覚悟しとけよ」