千年姫の幻想界
考えなかったわけではない。
自分は由緒正しい御家の一人娘。
候補になる可能性だって勿論あり得た。
でも……まさか、本当にこの話が出てきてしまうなんて。
姫様には大変申し訳ないけれど、正直嫌……。
今度は隠さず、視線を落とした。
そんな残念そうな娘の姿を見て、めでたい話だと説得するのが躊躇われた。
小さい頃から、あまり自由にはさせてやれなかった。
同い年の子供達が外で走り回り、川や野に行き日に焼けている間も、華は厳しい稽古に明け暮れていた。
……かと言って、姫に逆らえるはずもなく。
「分かりました、お母様」
気持ちを切り替えた華からその言葉が出て、申し訳なくもほっとするのだった。
(頑張るのよ私!)
雅様と伽凛様の前……失敗は許されない。
お母様のためにも。
唇をキュッと結び、顔を上げる。
姫になるとは限らないし。
正直、私が姫だなんて、考えられないけれど。
……私で大丈夫なのかしら?
またもやうーんと考えていたが、それは後に分かる事。後にしか分からない。
そんな答えを出し、部屋に戻ってある物を探した。