千年姫の幻想界
カタ……
「ええーと……」
カタカタカタ……コトン。
「あったわ!」
複雑なからくり箱を開け両手に掲げたのは、祖母と母が、半分づつ作ってくれた硝子を連ねた腕輪。
御守りとして、大事な時に持っている。
宝物を腕に嵌めると、また窓辺に座って町を眺めた。
朱色を基調とした、優美な和の町。
時刻は燃えるような夕方から夜に移り始め、ポツポツと灯篭に光が灯っていく。
簪、着物、お香に紅を売るお店。
宝石やガラス売りの少女達。
華の机には、蝶の硝子細工がちょこんと置いてある。
ガラス売りの友人に貰った物だ。
ガラス売りは女性の仕事。
硝子細工をクルマに乗せて売るのが普通だが、番傘に吊るしたり術で宙を舞わせて売り歩くときもある。
「おーい!こっちだ!」
新しい宿でも建てるのだろうか。
見れば、威勢よく叫びながら木材を運ぶ男性陣。
(平和ねぇ……)
少しだけ…
この町を守る、姫の存在の大きさを感じた。
──この平和を、自分で壊してしまう日が来るなんて、これっぽっちも想像せずに。
華の視線に気づいて此方を向いたガラス売りに手を振りながら……
この平凡な幸せが、ずっと続けば良いと思っていた──